「カラーの仕事をしています」というと、多くの女性からの反応は「ファッションの仕事ですか、私に似合色は何色？」また、男性からは「印刷関係の方ですか？」と尋ねられる機会が多かったのでした。しかし、『カラーコーディネート』の仕事はとても幅が広くて奥も深いのです。学問の分野でいえば、物理、科学、哲学、生理学、心理学、美術・造形、経営などなど、多岐に渡ります。私が手がけた仕事を紹介しましょう。
まず、色彩講座の講師。それも市や県で主催する一般市民の方対象の講座、商工会議所などで主催する経営者向けの講座、そして、カラーコーディネーター検定試験のための対策講座。ある短期大学でカラーとは別の科目を担当していましたが、「カラーの学習は、一般教養を身につけ、感性を養うのに役立ちます」と提案したら採用され、１８年度から前期は「カラーコーディネート演習」の科目を担当するようになりました。
次に建築物に関連した仕事。これは建設会社からのオーダーだったのですが、住宅のリフォームの際のインテリアや什器の色彩アドバイス。これは、建設会社と注文主の方双方に提案をして、最終的には個人の方が予算などを考えて決定します。そして、建設会社が内装工事を行い、壁紙や床材などをそろえ、工事をして、また什器も建設会社がとりまとめて発注する、というものです。
同じ建設会社からの仕事で、店舗のリフォームの際の色彩計画をしたこともあります。「色彩計画」といっても、個人宅と同じように、壁紙や什器の色を決め、数ある材料の中から、床材や、それに合う壁紙、照明器具などをカタログから選び、ボードに店舗内のイラストとともに提案をします。その際、そのお店の扱う商品と金額、客層、立地も考慮します。
そして、お店やブランドのロゴマークの調査、提案の仕事。これは、クライアントがあるデザインと広告の会社に発注をして、私はそこの下請けの形で携わりました。指定された業種の店舗のファサード（屋根や看板の色）を見て歩き、傾向をまとめて、分析します。そしてある業種のファサードで使われている色の傾向を調べて、調査書としてクライアントに提出したり、クライアントの要望によっては、新しいファサードやその店や商品にふさわしいロゴデザインを開発して提案します。
ひとりで何もかもできなくても、建設会社やデザイン会社と組むことにより、仕事の幅が広がりました。
そのほかに、大面積の商業施設全体のレイアウトや色彩計画に携わる人、建築士・インテリアコーディネーターとして設計をしながら色彩計画をする人、精神面で病んでいる人に絵を書かせたり、ある色を見せて回復を助ける仕事をしている人、企業でその製品の色のアドバイスをする人など、カラーの仕事は本当に幅が広いです。
私はカラーコーディネーター検定試験のために勉強することによって、色彩の基礎が確認できましたし、２級、１級と上級を勉強することで、知識に広がりが持てたような気がします。実務が先で検定のための勉強をするのか、あるいは検定試験に合格してからプロを目指すのか、にわとりと卵、どちらが先でも良いでしょう。興味がある方は是非、勉強をしてみてくださいね。
■試験概要
1級、２級、３級があり、１級ほど難易度が高くなります。
主催は、東京商工会議所で、年２回実施されます。
■受験資格
学歴・年齢・性別・国籍に制限はありません。
2級、1級からの受験や、2・1級、3・2級を同日に受験することも可能です。
■3級 以下の基礎知識の問題
光と色に関する物理学
色の測定とその表し方に関する測色学
人間の目の構造に関する生理学
色の知覚と感情効果に関する心理学
色彩調和および、色彩文化
…以上の基礎知識を理解している。
■２級 以下の専門知識の問題
色彩の物理学
測色学
生理学
心理学
色彩計画
色彩の応用 …以上の専門的知識を理解している。
■１級 応用能力を問う問題
共通
３級、及び２級テキストの色彩学の応用能力を備えている
選択 ３分野のうち１分野を選択
・第１分野「ファッション色彩」
ファッションおよびパーソナルスタイリングの色彩に関する高度な技能と指導能力を備えている
・第２分野「商品色彩」
商品開発および販売に関する色彩提案と指導の高度な能力を備えている
・第３分野「環境色彩」
建築・環境等の色彩計画に関する高度な技能と指導能力を備えている
